「徳右ェ門 古今つれづれ語り」第二話

  • 2009.09.15 Tuesday
  • 13:21
「徳右ェ門 古今つれづれ語り」第二話●「張り板」●

小間物屋 徳右ェ門でございます。

月の満ち欠けがいつの間にやら一巡りしてしまったようでございます。
あちらこちらを行きつ戻りつするせいか、私の記憶も何やらウロウロ覚束無い(おぼつかない)今日この頃でございますので、そこの所はどうかご勘弁くださいますよう先ずはお願い申し上げます。

先だって、久方ぶりにこちらに顔を出しました所、いやはや何とも懐かしい光景を眼にいたしました。
こちらに住まう職人母娘がこの残暑の中、長細い板を立てたり横にしたり大騒ぎしております。なにやら楽しそうでしたのでそっと覗きに行ってみましたところ、その長い板は、「張り板」ではありませんか!
皆様“洗い張り”という言葉を耳にしたことがございますでしょうか?

少し前、キモノが日常着だった時分は、家のものが自分の家人の着物を仕立て、汚れたら自分の家で洗うのがごく普通の事でございました。もちろん裕福な大店など使用人が多い所は針女や洗濯女に任せたりしていたようでございますが、われわれ庶民はとてもとても。
汚れた着物は、時として縫い目を全てきれいに解き、ぺラッっとした布の状態に戻して洗い、そして干して、再びまたも元の状態に縫い上げるのです。なぜ、そのままの状態で洗わず、わざわざ解いてから洗うのか?と、こちらの方々は不思議に思われると存じます。
もちろん解かずにそのまま洗って干すこともございますが、縫い目に溜まるゴミ屑はなかなかに取れにくい上、縫い目は布が傷みやすいのです。そして何より素晴らしいのは、板に貼って干すことで、今皆様が使われるアイロンをかけたような状態にシワ無く乾かすことが出来、また仕立て直す時に、もう洗っても落ちない汚れや擦り切れた部分をまだきれいな他のパーツと入れ替えたりする事ができるのでございます。一枚の着物を長く大切に着ていくための智恵から生まれた何とも合理的な方法がこの“洗い張り”というわけです。

いつの頃から“洗い張り”が行われていたのか、私には分かりかねますが、錦絵などの刷り物にもその様子が描かれておりますのを見ると、そう昔でも、またそう最近でもないのでございましょう。こちらでも、昭和の代の中ごろまではそこかしこの庭先でよくみかけたものでございます。思えばガラスの窓に洗ったハンカチを伸ばして貼って乾かしていたのは洗い張りの名残かもしれませんなあ・・・。

さて、もう少し時間もあることですし「洗い張り」をいう言葉を初めて耳にする方の為に、ちょいと簡単にご説明をいたしましょう。と言っても、お恥ずかしながら私自身は「洗い張り」をしたことがございませんゆえ、この目と耳で見聞き知った光景を思い浮かべてお話させていただきます。曖昧模糊とした点もあります事どうか何卒勘弁くださりませ。

まずは着物を縫い合わせている糸を全部抜き、ペラペラとした数枚の布の状態にほどきます。その布を水を張った桶に入れて洗うのですが、ここで汚れを落とす何かを水に溶かして洗います。何を入れていたか定かではないのですが、まあ時代によっても様々だったように思われます。私が最近まで一番眼にしましたのが「ふのり」でございます。「ふのり」という海藻を煮て布でこし採った液体を桶の水に溶き、そこに布を入れ洗うのです。汚れを落とし、且つ乾いた後の布をピンとさせるという、洗剤と洗濯糊一人二役のスグレモノだったようでございます。さあ、ここでいよいよ「張り板」の登場です。反物幅より幅の広い長い板でございますが、それを斜めに立てかけ、ふのり液で洗った布をかるく手で絞った後、その布を広げながら板に貼り付けていくのです。出来るだけシワなく布を縦横まっすぐによれないようにしなければなりません。粘着性のあるふのり液を含んでいる布は、けっこう上手い具合に張り付くようです。きれいに貼れましたらその板ごと天日に干し、後はお天道様と風に任せて待つ事しばし。完全に乾いたところで板から布をはがします。シワの無い、そして程よく糊のきいてパリッとした布に蘇ります。これが「洗い張り」というものでございます。
どこの家でも普通にしていた事ですから、方法や手順などは皆さまざまかと存じますが、大方はこのような感じではないでしょうか。洗い張り専用の「張り板」を使っていた者もいれば、家の戸板をはずして使っている者もございました。ほんとうに、ほんの少し前まではごく普通の光景だったのでございます。

そういえば、大騒ぎしていた手前どもの職人母娘も、母親の実家から「張り板」が何十年ぶりに出てきたそうで、その者が子供であった昭和の20年代頃までは、庭先で母親が木綿だけでなく普段着用の大島紬や銘仙の着物、そして蒲団側などちょこちょこ洗い張りしていた記憶があると申しておりました。その記憶を思い出しながら、今また「洗い張り」に挑戦しているようでございます。娘のほうの記憶に残るその長い板は既に本来の役目を忘れられていた頃のようで、冬になるとその板の上にずらりと漬物用の白菜が並べて干してあった光景しか浮かばないらしく、まさかこれが「張り板」とは思わなかったと呟きながら初めての「洗い張り」に悪戦苦闘しておる様でございます。

アイロンなるものがある今世ではさぞ物珍しい光景となることでしょうが、自然の力と人の手で布を何度も蘇らせるこの素晴らしい智恵と技を、この2人が身につける日が来ることを楽しみに、またちょこちょこ覗きに参りたいと存じます。

これまたすっかり長っぱなしになってしまいました。今日は生憎ちょうちんを忘れて来てしまったので、日のあるうちに帰らねばなりません。
それでは皆様、本日はこれにて失礼とさせていただきます。

*職人からの一言・・・主(あるじ)の説明だけでは今ひとつ心もとないで、番頭さんに撮ってもらったデジカメ画像を旦那様にはナイショでお見せします。。


ただ今、張り板に貼り付け中


洗い張り後の布は、こんな風にピンと張っています


月代の帯留が入荷しました

  • 2009.09.11 Friday
  • 18:30
月代の帯留「落花生」(三分紐用)が入荷いたしました。


月代 象牙帯留「落花生」 三分紐用 87,000円(税込)


三分紐用の帯留です。晩秋が旬の落花生。本物と見間違いそうな落花生ですが殻の中から
ちょっとのぞいた実には上品な艶があります。矢車と漆に金粉で染めてある落花生には本物にはない上品さがあります。

小間物屋 徳右ェ門 謹製『復刻 袂おとし』が入荷しました

  • 2009.09.06 Sunday
  • 17:27
ご好評を頂いております、小間物屋 徳右ェ門 謹製『復刻 袂おとし』が入荷しました。
先月の発売以来、着物をお召しになるお客様から「便利そう!」とのお声を頂き、ご注文が続いている、当店の密かな人気商品です。


●左上:絣青×絞り緑 ●右上:水色人物柄×紅葉 ●左下:赤桐×ピンク菊 ●右下:紫×紫
*本日入荷の商品は、上段と下段左の三点です。


初回入荷分は、紐の長さが145cmと135cmの二型になっておりましたが、紐が長い方が袂からうっかり出てしまうということが少ないため、今回は145cmのみの展開と致しました。

ロングセラーの定番商品として皆様にご愛顧頂ければと願っておりますので、袂おとしに対するご要望や実際にお使いになったお客様のお声をお聞かせ頂ければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

月代の帯留が入荷しました

  • 2009.09.02 Wednesday
  • 18:54
秋の気分を一足早く楽しめる、月代の瓢箪型帯留二種がWebショップに入荷しました。


月代 象牙帯留「豆瓢箪」二分紐用 42,000円(税込)


月代 象牙帯留「瓢箪」二分紐用 85,000円(税込)


どちらも二分紐用ですが、デザインで印象が随分と異なります。
豆瓢箪の方は、ちんまりとした可愛らしい形で、したの部分に三日月型に入った金がさりげないポイントになっています。
横長の瓢箪の方は、瓢箪の棚越しに見るお月見のイメージで、秋の一景を切り取ったような情緒溢れる作品です。

『美しいキモノ』秋号に掲載されました

  • 2009.08.20 Thursday
  • 13:19
本日発売の『美しいキモノ』2009年秋号(アシェット婦人画報社)に当店の商品が掲載されました。

『誂え小物で差をつける』という特集で、当店のお得意様がご登場になり(P.272)小間物屋 徳右ェ門にご注文下さった商品の数々をご紹介頂いています。

また、誂えが出来る作家&ショップリスト(P.273)に、当店の情報と合わせて、小間物屋 徳右ェ門の名刺入れとトートバッグを掲載して頂きました。

掲載された名刺入れとトートバッグは、Webショップでも販売致しておりますので、是非、ご覧下さい。

店舗では、小間物屋 徳右ェ門の正絹トートバッグ(税込5,000円〜)と象牙前飾り付き名刺入れ(税込26,000円〜)のお誂えも承っております。是非、お気軽に、ショップのお問い合わせフォーム、または、メール shop@hanakagesho.shop-pro.jpでお問い合わせ下さい。


小間物屋 徳右ェ門 象牙前飾り付き名刺入れ「波に兎」 26,000円(税込)


小間物屋 徳右ェ門 正絹トートバッグ(底に酒袋の補強付) 6,000円(税込)

「徳右ェ門 古今つれづれ語り」第一話

  • 2009.08.11 Tuesday
  • 16:29
この度、和こもの花影抄で作品を取り扱っている作家のコラムを当ブログで連載する運びとなりました。モノづくりの姿勢や作品へのこだわりなど、作家の生の言葉をお伝えすることによって、作品に込められた作家の想いをお客様により身近に感じて頂ければ幸いです。

連載コラム第一弾は、「小間物屋 徳右ェ門」の登場です。
小間物屋 徳右ェ門は、物を長く大切に使って再利用する昔ながらの始末の心、今で云う、エコとリサイクルがコンセプトのブランド。家にある着物や象牙の端材を使い、縫製と象牙彫刻を母娘の職人が分担して作品を制作しています。象牙の前飾りがついた名刺入れや数寄屋袋は、二人三脚の技術とセンスが相まって、他に類を見ないオリジナリティとクオリティの高い仕上がりでご好評を頂いています。

それでは、徳右ェ門コラムのはじまりはじまり。情緒溢れる口調で語られる楽しい読み物を、どうぞ皆様ご高覧下さいませ。
(和こもの花影抄担当:大橋)


「徳右ェ門 古今つれづれ語り」第一話 ● 小間物屋 徳右ェ門謹製 『復刻 袂おとし』 ●

小間物屋 徳右ェ門でございます。
数年前の徳右ェ門展の折、こちらでご挨拶させていただいておりますがお初の方々も多々いらっしゃる事と存じます。

さて、皆様は「たもとおとし」という言葉を耳にしたことはございますでしょうか?
漢字で書きますと「袂落とし」。
読んで字の如く、キモノの袖の袂(たもと)に落とすという意味でございます。

ほんのちょっと、つい100年ぐらい前、日本の皆様がキモノを着て暮らしていた頃まで使われていた小さい袋物の呼び名ですが、ご維新後あれよあれよと洋装化が進み、いつの間にかこの日本から姿を消してしまったモノでございます。
江戸から明治にかけてシーボルトが日本から持ち帰った収集コレクションの図録に載っていたり、また古(いにしえ)の袋物コレクションの中にひっそりとその片鱗を見かけるばかりで、今では、その言葉すら忘れ去られようとしております。

ご存知の通り、キモノにはポケットがございませんので携帯したい小物類は巾着にいれ、根付を用いて腰から提げるか、もしくはフトコロ(懐)や袖の袂(たもと)にちょいと入れることとなりますが、やはり懐や袂は落とす心配もあり無用心でございます。
そこで、いつしか考え出されたのが「たもとおとし」。
細い紐の両端に小さな袋状(もしくは籠状)の収納入れを付け、長襦袢を着た上に首から紐を提げて両側の袋を各々の袖の袂に落とし入れます。そして、その上からキモノをはおり帯を締めますと紐で繋がった袂の袋は落とす心配がございません。
人様の袂(たもと)の中ですので、この私とてそうそう目にする事はございませんから、確かな事はわかりかねますが、人それぞれ袂に入れる物も違いますでしょうし、その形態も一様ではなかったかと記憶しております。
濡れた懐紙や手ぬぐいを入れる場合は水分を通しにくい藤編みの籠状だったり、また良家の子女は金襴緞子や刺繍で飾られた豪華な「袂おとし」を袂(たもと)に忍ばせていたようでございます。

キモノを日常に着なくなった今世久しく、私もすっかりその存在を忘れておりましたが、
数年前こちらに暮らす手前どもの職人が、キモノを着て出歩く際ICカードなるものを駅の改札で手提げからその都度出し入れするのがなかなか面倒だとぼやいておりますのを耳にし、「それなら、袂(たもと)入れておくが良かろうに・・・」とつい口を挟みましたところ、「女のキモノは男性と違って、袂(たもと)の開きが大きいので薄っぺらなカードは落とすのが心配で入れられない。」とか、「ならば、袂おとしに入れておけば安心だろう」と、私もふと無意識に口にしたのですがそれを聞きつけた職人2人がすっかり張り切って早速自分用の袂おとしを作ったわけでございます。
袂落としを見たこともない今世の職人ですので、内心半信半疑のようでしたが使い始めてみるとその便利さに驚き、自動改札とやらを袂でタッチする様を嬉々として私に見せるほどでございました。
一度はこの日本から姿を消してしまった「袂おとし」が、今また現代で新たな形で見直され、そして再び使われるということはこの上なく嬉しいことでございます。

そこで、現代のキモノをお召しになられる方々にこの便利さを知っていただくべく、今回この「袂おとし」を小間物屋徳右ェ門でオリジナル復刻いたしました。
日本のキモノ文化の奥深さといいますか、そのフトコロ(懐)の深さの一端をほんのちょっとでも味わっていただければ、小間物屋冥利に尽きるというものでございます。

おっと、すっかり話が長くなってしまいました。(こいつはいけない、あちらの木戸が閉まってしまう・・・)
それでは、またのおめもじを楽しみに、これにて失礼とさせていただきます。

* 職人からの一言・・・両側いずれもICカードが入る大きさにしております。また、袂のなかでカードが飛び出さないように小さなスナップボタンをつけました。小さな小物を入れても大丈夫なように片方は蓋付きタイプにしています。紐にカニ環を付けて取り外しが出来るようにしてありますので、首から提げたままの状態でも左右の袋を入れ替えたりできます。ICカードはもちろん、ミニ鏡やちょっとしたお化粧品(脂とり紙や口紅etc.)、その他いろいろお好みに合わせてお使い下さいませ。


小間物屋 徳右ェ門謹製『復刻 袂おとし』 4,500円(税込)

* 実際に袂おとしを当店スタッフが使ってみました!(とても便利で感動モノです!)


1)袂おとしの片方にICカードを入れます。


2)袂おとしの紐を襦袢の上から肩にかけます。


3)袂おとしを肩にかけるとこんな感じになります。


4)紐が長い場合は、肩甲骨の辺りなど結び目がごろごろしない所で余分な紐を結びます。


5)襦袢の袂に袂おとしを入れます。


6)襦袢の袖に袂おとしを入れたところです。この後は通常通りに着物を着ます。


7)お出かけの時は、駅の自動改札でICカードの入った方の袂を袂おとしごとつまみます。


8)袂を自動改札にタッチ!これで駅の改札もバッグを開けずに、簡単にスルー!


こちらでご紹介した袂落としはWebショップでも販売中です。是非、ご覧下さいませ。

吉見普光の帯留が入荷しました

  • 2009.08.07 Friday
  • 16:16
Webショップに吉見普光の帯留が二点入荷しました。


帯留「流水」三分紐用 青 18,690円(税込) 黄 16,590円(税込)


ころんとした可愛らしい翡翠の玉が並んでいるシルバーの帯留です。
シルバーの台座を裏返すと美しい流水紋が現れ、隠れたお洒落をお楽しみ頂けます。

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